執務環境としてのFreeBSD

FreeBSDを使うユーザはほとんどがプログラマなので、開発環境としてのFreeBSD環境はすでに多くの記事が書かれています。エディタ・シェル・ターミナルといった開発ツールについてや、どのウィンドウマネージャを使うか、あるいはKDEを使うかGNOMEを使うか……といった話題であふれています。この点については情報に困ることはないでしょう。

一方、GSuiteのアプリやSlackなど、開発ではなくどちらかといえば事務に使うようなツールをWindowsやGNU/Linuxディストリビューション(特にUbuntu)と同等に利用できるのか?に注目した話題は少ないようにみえます。職場では2年ほどFreeBSDをインストールしたPCで開発や事務をこなしていましたが、事務系のツールで不便だと思うときのほうが多いです。そこで、いままでの経験をもとに各種事務系ツールについて残せるだけ残しておこうと思います。


  1. ブラウザの選択について
  2. GSuite
  3. O365
  4. Slack
  5. ヘッドセットを使う
  6. 印刷
  7. おわりに

ブラウザの選択について

FreeBSDではFirefoxかChrome(Chromium)の二択でしょう。どちらを選ぶか?はさほど重要ではなく個人の自由のようにみえます。しかし社内Webアプリの中にはFirefoxでアクセスすると「Chromeを使ってください」というエラーメッセージとともに利用を拒否されるケースもあります。単にユーザエージェントをもとに判別しているに過ぎないので、User-Agent Switcher and Managerのようなユーザエージェントを偽装できる拡張機能を使えば済む場合がほとんどです。ですが本当にChromeでないと利用できない機能があったりします。念のためどちらもインストールしておくのが安心でしょう。

GSuite

メールやその他オフィススイートのためにGSuiteを採用しているなら、FreeBSDでも安心して事務用OSとして利用できます。GMailやGoogle Drive、Meetといったアプリケーションはすべて問題なく動作します。少なくとも僕は、GSuiteのメール・オンラインストレージ・ビデオ通話・各種オフィススイートを使っているときに「このアプリケーションはこの環境に対応していません」のようなエラーメッセージを見かけたことはありません。

O365

一方でMicrosoftのO365をオフィススイートとして採用しているなら少し注意が必要です。Word・Execl・PowerPointがWeb上で利用できるのはとても便利ですが、次のような問題を見つけています。

最近GNU/Linux版のネイティブアプリが公開されたTeamsは、ブラウザからビデオ通話が使えます。

Slack

Slackはチャットツールとして、またビデオ通話用のツールとしても高い評価を得ているようです。しかしFreeBSDではSlackのビデオ通話が使えませんでした。Firefoxではサポートされていない旨のメッセージが表示され、Chromiumでは通話画面がローディングしたまま先に進みません。チャットはなにも問題ありません。

ヘッドセットを使う

Google MeetやMicrosoft Teamsなどでビデオ通話をする場合、ノートPC内蔵のマイクとオーディオを使うよりコールセンターで使われるような業務用のヘッドセットを使ったほうが明瞭に通話できます。僕の場合、オフィスではゼンハイザーの「SC 60 USB ML」を、自宅ではエレコムの「HS-ARMA200VBK」を使っています。どちらもFreeBSDでうまく動作します。

FreeBSDでヘッドセットを使いはじめるときはいくつか設定する必要があります。

ヘッドセットをマシンに繋いだあと、それがシステム上でどのように認識されているかを確認します。これは/dev/sndstatを読めば分かります。以下は僕の個人的なマシンでの/dev/sndstatの中身です。ここではpcm6として認識されているようです。

cat /dev/sndstat
pcm0: <NVIDIA (0x0080) (HDMI/DP 8ch)> (play)
pcm1: <NVIDIA (0x0080) (HDMI/DP 8ch)> (play)
pcm2: <NVIDIA (0x0080) (HDMI/DP 8ch)> (play)
pcm3: <Realtek (0x0b00) (Rear Analog)> (play/rec)
pcm4: <Realtek (0x0b00) (Front Analog)> (play/rec)
pcm5: <Realtek (0x0b00) (Internal Digital)> (play)
pcm6: <USB audio> (play/rec) default
No devices installed from userspace.

次にデフォルトのオーディオデバイスをカーネルパラメータで設定します。ここではpcm6ですので/etc/sysctl.confに以下のように書きます。

hw.snd.default_unit=6

再起動しなくてもsysctl hw.snd.default_unit=6と実行して/etc/sysctl.confへ加えた設定を反映できます。

最後に、マイクの音量を調整します。ヘッドセット側でマイク音量のホイールを回す必要があればそうします。またmixerコマンドからソフトウェア側でマイク音量を調整します。たとえばヘッドセット接続直後はこうなっているでしょう。

mixer
Mixer vol      is currently set to  75:75
Mixer pcm      is currently set to  75:75
Mixer mic      is currently set to  0:0
Recording source: mic

Recording source:と示されているデバイスが現在有効なマイクです。ここではmicで、音量が左右ともに0となっておりミュートされている状態です。マイクの音量は同じくmixerコマンドから次のように調整できます。

mixer mic "70:70"

実際の値はビデオ通話の相手とやりとりしながら調整してください。

印刷

印刷は特に経費精算をするときに使いますが、ドライバや実行すべきコマンドがいっさい分かっていないのでFreeBSDからなにかを印刷したためしがありません。いつも会社支給のノートPCから印刷してしまいます。

おわりに

まだ一社しか経験しておらず、何十年も会社づとめしているわけではないのでまだ踏んでいない罠があるかもしれません。むしろ、いまは上述したことさえ気をつけていれば快適に事務作業ができるという意味でもあります。特にGSuiteは(提供元のふるまいはともかく)どんな環境でもブラウザさえあればだいたい動きます。デスクトップOSが統一されていないような組織で特に優れているサービスです。