プレゼンテーションのアンチパターン
2023年2月24日 初稿
久しぶりに発表の練習をしたり人の発表を聴いたりする機会がありました。練習の場では個人的にイケてないなと感じるパターンを指摘して潰していったし、本番の場ではこれダメだなと感じる場面もありました。あらためてそれらを文章にして整理します。
練習しない
当たり前ですが資料だけ用意して喋る練習をしないのは論外です。本番では練習の場よりも多くの人が集まるわけで、その緊張感からいつもどおりの喋りや振る舞いができなくなります。プレッシャーに耐えるには練習量に裏打ちされた自信とそれによる(または持ち前の)度胸に頼るしかありません。練習していない人、あるいは資料の準備すらままならなかった人はその発表の下手さやじこちなさから、聴き手に至らなさを看破されています。
本番と違う環境で練習する
本番はどのように発表しますか?自分のノートパソコンにプロジェクターをつなげますか?あらかじめ誰かに発表資料を提出しますか?ビデオ通話で画面を共有しながら喋りますか?ビデオ通話のツールはなんですか?
可能な限り本番と同じ環境・同じツールを用意して練習しましょう。練習には喋り方だけでなく当日の進行方法も含まれています。
スライドに文字しかない
よくあるケースです。スライドに箇条書きの文章がびっちり。それを読み上げるだけ。喋っている内容とスライドの内容が完全に合致する音読会ならわざわざ集まる必要はありません。スライドにする必要もないのでWordやGoogleドキュメントなどを使った文書を作って共有したほうが明瞭かつ手っ取り早いです。
スライドを使って説明し語りかける以上は文字だけでなく図も活用しましょう。文脈にまったく沿わない意味のなさないイラストやアニメーションは必要ありませんが、なにかデモンストレーションをする場合はそれをその場でやるよりも撮影した動画をスライドに埋め込むと確実になります。デモが失敗したさいの保険として残しておくのもいいでしょう。
スライドに画像しかない
「スライドに文字しかない」の逆パターンです。大きな画像に文章1文だけ、というパターンが代表例です。エモーショナルですが資料未満です。
その場で聴いた人しか内容がわからないスライドは作らないようにしましょう。最低限、あとから資料を読み返しても内容がわかるようにしましょう。
もしこのようなスタンスを崩したくない場合は発表内容をまとめた文書を用意し、後日それもあわせて共有するという手段もあります。
訥弁「あー」「えー」が多い
喋っているなかで「あー」「えー」「えっと」といった訥弁(とつべん)が挟まれば挟まるほど聴き手は話に集中できなくなります。音楽を聴いていて10秒に1回ノイズが挟まったとしたら集中できますか?それをプレゼンテーションにも適用してみてください。
練習しても人によっては完全に訥弁をなくすことはできないかもしれません。それでも練習によって減らすことはできます。訥弁を意識的に喋っている人はいないでしょう。ほとんどが無意識に発音しているだけです。克服のためのコツを以下にまとめました。
- 他人に指摘してもらう・自分の発表を録音して聴いてみる
- 訥弁を減らすことを目的とした練習をしましょう。訥弁が挟まっているかどうかを第三者に指摘してもらいましょう。ひとりで練習する場合は発表を録音しておき、それを聴いてみましょう。
- 喋る内容を事前に用意する
- 原稿を用意して発表のときはそれを一言一句なぞって喋るようにしてみましょう。当然、原稿は口語体で書きます。原稿どおりに喋れば訥弁が挟まる余地はないですし、練習すればするほど喋る内容のニュアンスを掴むことができ、原稿を見なくてもすらすらとアレンジを効かせながら喋ることができるようになります。
- 「間」を恐れない
- 「えー」を挟んでしまう理由のひとつに、発表途中でなにも喋っていない静かな時間を恐れ、なにか声で埋めないといけないという意識を持っているというケースがあります。この場合「間」は避けるべきものではないと考え方を変えましょう。発表のあいだすべての時間が声で埋め尽くされている必要はありません。「間」を恐れず、むしろ楽しみましょう。
自分から笑う
あなたのプレゼンテーションの面白さを決めるのはあなたではなく聴衆です。自分から笑うのはやめましょう。聴き手はどのような文脈のもとでその笑いを解釈していいのかわかりません。自嘲なのか?出来の悪さをごまかしたかったのか?聴き手を馬鹿にしたのか?それとも本当に笑うべき面白いポイントだったのか?本当に自分から笑う必要があるときのみ笑いましょう。
無駄なへりくだり
自信をもって発表しましょう。自信のある発表に無駄なへりくだりや自虐は不要です。
たとえば自分が簡単だと思っている図に対して「見ればわかると思うんですけど」といった一言は余計です。見てすぐわかるなら発表で喋るかわりにそのへんの廊下にでもそれを印刷して貼り付けておけば済むはずです。それに、聴き手の中に見ただけではわからない人がいたらどうするのですか?ネガティブな意味合いで「毒にも薬にもならない」という言葉がありますが、毒にも薬にもならないのはまだマシで最悪なのは毒になるケースです。知らず知らずのうちに毒を撒き散らしていませんか?
「汚い図ですみませんが」「見にくくてすみませんが」といった自虐もなしです。そういう自覚があるなら出直してくるか聴き手のためにキャンセルすべきです。
このような一言は練習の結果ではなく無意識のうちに口から出てしまうものです。練習する場合は喋った内容を振り返って余計な一言がなかったかどうかを確認し、練習を見ている中でこのような発言がポロッと出た場合は指摘しましょう。